2014年2月22日土曜日

My Love Song : Chapter.00 Artist

某月某日。とある街の郊外に佇む質素な邸にて。









愛犬たちが戯れている中。私は一人黙々と創作にうちこんでいた。
そもそも彫刻は私の専門外なのだが・・・


いつも2匹で駆けずり回って遊んでいる愛犬たちが、私の存在をやっと思い出したようだ。


「やぁ、お前達。やっと僕と遊んでくれるのかい?」

声を掛けてみると2匹とも私の方を見ながら更に近づいてくる。
 
 


だが、そのまま通り過ぎていってしまった・・・。
どうやら私の犬たちは、私の存在が見えないようだ。


苦笑しながら犬たちを見送っていると滅多にならない携帯が音を立てて私を急かす。


着信を知らせるディスプレイには、この街の市長の名前が表示されている。
出ないわけにはいかないか・・・・・・


「・・・はい、トリヴァーです。」
『やぁ、忙しいところすまない。君に依頼した例の彫刻の進み具合が気になってな』


「えぇ、順調に進んでますよ。今、大体8割くらいでしょうか」
『おぉ!さすがは天才芸術家スコット・トリヴァーと言うところか!それは完成が楽しみだ』

後ろに聳え立つ石の塊を無視して適当に答えたら、市長はありきたりな賛辞を熟々と並べ立て
やたらご機嫌そうだ。



 
  『では、この調子で頼むよ。君にはこの街の住民達も期待しているのだからな!』
「は、はぁ・・・」

ガッハッハ!と、市長にあるまじき下品な笑い声と共に、通話は一方的に切られてしまった。
 


八割方が未完成だ。なんてばか正直に言う必要もないだろうが、急いだ方が良さそうだ。

あの市長には住む場所の世話などもしてもらってるのだが、どうも波長が合わない。
いや、あの市長に合わせられるのは金や権力目当てで近寄っている人だけだろう。


飼い主の切羽詰まった状況も、全く構うことのないうちの犬たちは気楽だ。
  


 その暢気さがもの凄く羨ましいが、私は現実逃避している場合ではない。


ペットというのは多頭飼いだと飼い主は無視される運命だろう。
だが、彼らとの生活には創作意欲をかき立てられる何かがある。だからこそ一緒に居るのだ。


創作に打ち込む私を遠くから見守ってくれているのも、なかなかに良いものだと思う。
付かず離れず。その距離感が私には良いのかもしれない。


交流はなくても、彼らのおかげで私は一人じゃないのだから。


創作の合間に街へ買い出に行った際にボールも買ってきたのだが、
どうやら気に入ってくれたようだ。


「ポチ、はしゃぎすぎて怪我するなよ?」


私がそう言ったところで、普段からヤンチャな彼には効果があるかどうか・・・


と、数秒後にはこの有様だった。残念ながら効果はなかったようだ。
元々身体の大きな犬は遊ぶことが大好きだから致し方ないのだろう。


「ポチ?怪我したのなら獣医の所に連れて行くぞ?」


苦笑しながら声を掛けた途端に犬は飛び起き。拒否を示すかのように頭を左右に振っている。
獣医という単語を恐いものだと認識しているようで、いつもこの調子だ。


シベリアン・ハスキーは飼いやすいが、わりと繊細なのだろう。
気は優しくて力持ち・・・・・か。まさにその典型かな?

けれど、目先のオモチャに目がないのはペット共通だろう。





現実逃避している、犬ばかの手記のようになっているが、彫刻の納期は忘れたわけではない。
けっして、ないぞ! 
 


学生のような言い訳を並べ立てているが、私はやれば出来る子というわけではないのだからな。
やらなくて良いならやらないが。

無難にこなして無難に生きていくだけ。
私の人生における目標は、ただそれだけ。
それだけ・・・・・・だった。



2 件のコメント:

  1. chikoさんこんばんは!!
    驚きましたよ~!別館でストーリーを始めるのですね?!
    これは先日仰ってたchikoさんが新しくやりたいと言ってた事なんだよね?
    ストーリーだったのかぁ~(´▽`)これはストーリー好きには嬉しい朗報だな!

    この新しいコンテンツについて詳しい説明が無かったので一つお聞きしてもいいかな?
    このSSストーリーは、完全に創作ストーリーなのかな?それともフリープレイをストーリー仕立てに
    してるかな?それによってお話の見方も変ってくるので聞かせてね^^

    2匹のハスキーちゃん、やはり自分の好きな犬種を使いたくなるよね♪
    2匹ともとっても可愛いなぁ(´ω`)たまには毛のある大きな子をモフモフしたい(笑)
    飼い主のトリヴァー君がこのお話の主役なのかな。彫刻家なんだね。金髪のイケメン♥
    >無難にこなして無難に生きていくだけ。
    私の人生における目標は、ただそれだけ。
    こう言っている彼が
    >それだけ・・・・・・だった。
    このように過去形で語っているという事は、この後彼の人生は波乱の展開に?!
    これは楽しみだぁ~(´▽`)
    タイトルも 「My Love Song 」という事は、恋愛物なのかな~?

    chikoさん、ストーリーありがとう!私ストーリー読むのが本当に好きなの(。→∀←。)
    本館でオスカー様達のストーリー仕立てをやった時も凄く嬉しく楽しく拝見したのよ♪
    chikoさん文章書くのお上手だから絶対やれると思ってた!
    レビューとストーリーを平行してやっていくのは大変ですよね(凄い分かる^^;)
    でもゆっくりでもいいので続けて行って欲しいなぁ^^
    chikoさんがやりたいと思った時にやりたい方を進めて下さい。
    続きも楽しみにお待ちしていますね~!

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  2. >mirumom様へ♪

    miruさんこんばんは~!!
    あはは(笑)miruさんのアドバイスのお陰で踏ん切れました。
    その節はありがとうございました(^^)

    今のところ、自分の中でもまだなんとなくでしか形が決まってないのだけれど
    ストーリー風に持って行けたら良いなぁと思ってますよ♪
    ただ、今回のお話みたいな何か(笑)は序章みたいなものなので、
    概要とかは次回かな?とか思っていたんだけれど、分かり辛いやね(爆)
    手探り状態の素人仕事でごめんなさい(^^;)

    一応はストーリー大まかに筋道立てているのですが、今回は最初のとっかかりも兼ねて、
    フリープレイも若干混ざってます。これじゃ、ただ単に犬ばか日記だよね!(爆)

    シムのフリーウィルはOFFにしてあるので、後々はポーズとかも使うかも?(まだ見切り発車過ぎて未定デス)
    あ、でも、トリヴァーは序章のみの主役で、次回からは完全に巻き込まれた側(脇役)にまわります。
    主役は、以前ツイッターやブログの方で公開したボブカット?のお嬢さんになる・・・はず?

    根底にあるのは、オスカー様の誕生日企画で形にした拙い文章かな?(笑)
    それを踏まえると内容がモロバレになってしまうのが困るところです。
    恋愛もの・・・だと良いよね?(←聞くな私!w)

    主役達差し置いて、脇役のトリヴァーサイドから撮り始めたらわんこ達が可愛かったんだもん!>ω<←
    私ったらハスキーばかだもんで、どうしてもハスキーを起用してしまうと言う筋金入りですみません(笑)
    モフモフ可愛いですよ、モフモフ!(笑)でも、スレンダーなイタグレさんにも憧れちゃう(^^)
    ニャンコさんとかも嫌いじゃないから登場させたいなぁ。とか考えてると脇道逸れるから大変です(´・ω・`)

    いやいやいやw超絶素敵なストーリーを展開されてるmiruさんにそんなことを言って頂いちゃったら
    調子こいちゃいますよ?(笑)
    オスカー様の企画のはただ、私が好きなオスカー様達のお話を、形にしたかっただけですから~><;
    自己満足すぎてお恥ずかしいくらいなのに;でも、ありがとうございます><

    うぅ・・・レビューもね、ランツのせいで進んでないから焦るし、でも、ストーリーもやってみたいし・・・・
    で、かなり悩みました。平行するのはホント大変そうね(^^;)
    はい!マイペースで進めていこうと思います(^^)
    温かいコメント、ありがとうございました~!

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